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辛子明太子の老舗「ふくや」の一社提供によってテレビ西日本で放送された連続ドラマの劇場版(2作目)という、特異なバックグラウンドの作品。不意を突かれたのは、ご当地映画の前提であるはずのロケーションにそそられる旅情が、不自然な照明によるセット撮影が多いせいでほとんど感じられないこと。つまり、成り立ちだけでなく仕上がりとしても徹頭徹尾ローカルで内向きな作品なのだ。博多華丸・大吉のネタから大吉のツッコミだけ排除された世界を想像してもらえれば。
「犬鳴村」で当てた「恐怖の村」シリーズにおいても、惰性でシリーズの延命を図るのではなく、その製作環境を利用してJホラーを革新すべく、テーマや手法の実験を繰り返してきた清水崇監督。本作もその流れを汲んだ作品で、地縛的な呪いとメタバースという相反するテーマをアクロバティックに処理している。もっとも、研究室の設定や研究員の役割に説得力がなく、メタバース側が恐怖の足を引っ張っている。メインキャスト2人が中心のシーンには緊張感があっただけに残念。
フィルモグラフィーからその作家性を窺い知ることは困難なのだが、安定した演出手腕をみせる監督の宮武由衣が、この謎の企画をオリジナル脚本で成立させていることに恐れ入った。旧来のジェンダー規範を壊そうと鼓舞するのではなく、その中で勝ち上がってきたであろう年長の女性による、新しい時代の女性アントレプレナーへのエンパワーメントというテーマはなかなかユニーク。しかし、終始気になったのは、この作品のどこに観客がいて、どうやって届けるつもりなのかということ。
民放ドラマの映画化は、設定の風呂敷だけが広がり、普段の絶叫演技がさらに強調されて目も当てられない代物になりがちだが、本作は一味も二味も違う。取調室という限定された空間でのクライマックスに向けて、上質なサスペンスが持続し、その過程でドラマ未見者に向けても過不足なく各登場人物の背景が描かれていく。本作が長篇初演出となったテレビ朝日の常廣丈太には映画を撮り続けてほしい。総理大臣役の市川猿之助、本筋には絡まない杉咲花、両者への演出が特に見事だった。
前作は、昭和30年代という慌ただしい時代の中で、辛子明太子作りに奮闘する主人公夫婦の日々が、人情に笑い、博多祇園山笠などを盛り込んで賑やかに描かれていて、それなりに楽しんだ。がその続篇の本作、めんたいぴりりどころか、ぜんたいゆるる。夫婦を脇に置いたままの取って付けたようなエピソードが並び、舞台となる中洲市場からして市場の関係者以外は見掛けないショボさ。流れの屋台引き・余貴美子のキャラもワル乗りの思わせぶりで、とにかく脚本も演出もいただけない。
ホラー映画の進化か、迷走、もしくは暴走か。それにしても、島のどこかでひっそりとさまよっていたに違いない伝説の怨霊も難儀なことである。バーチャル・リアリティとかメタバースとか、とんでもない空間に引っ張り出されて。けれどもこちらには無理やりあれこれ盛り込んでいるとしか思えず、恐怖どころか何が何やら。そういう意味ではネット情報に振り回されているZ世代向きのホラー映画と言えるのかも。お膳立ての奇抜さも含めて。島のシャーマンが賑やかし扱いなのも何だかなぁ。
現代人は匂いと音に敏感。特に匂いは香水であっても迷惑がられたり。その香水をキーワードにした本作、宮武監督自身のオリジナル脚本ということで、かなり期待したのだか、うーん、ひところ流行ったレディースコミックものの令和版! むろんだから駄目ということではないが、仕事も夢もない主人公が、魔女と呼ばれている香水店のオーナーに出会ったことでついに起業家にという話は、かなり雑でご都合主義、魔女のエピソードに至っては、おいおい! 香水の効用も押し付けがましい。
現実に起こる政治家、権力者、時代の寵児や著名人などの犯罪、及びスキャンダルは、こちらは痛くも痒くもない最高の気張らしである。このドラマシリーズを観るのはこの劇場版が初めてなのだが、取り調べチームが関わる疑惑が、かなり現実の事件や騒動と重なるところがあるのも娯楽映画として楽しめる。チームのメンバーの個性や役割が分かりやすいのも安心して観ていられるし。証拠を積み上げた上での最後の難関、天海祐希と市川猿之助の対決は、両者、さすが余裕のいい勝負。
映画版「めんたいぴりり」を観るのは4年ぶり2回目。わざと旧式の、昭和な、フラットなセットをメインにしていながらも、たしかに博多、中洲の空気を出していると感じた。かの地には肉体労働の出張バイトで数日滞在した。博多訛りはポルトガル語のように甘く、ひとは男女ともにチャーミングだった。屋台のラーメンは絶品で、なにか不思議な、取り残されて生じたユートピアのような風土だった。それを謳いあげ、盛り上がるところでは確実に良い画をキメる本作。キライじゃない。
キカイジマとは機械島か。05年のディストピアSF「アイランド」(監督マイケル・ベイ)のテイストをVRに置き換え、ホラーにしたとも思えるが結構ゾクリとさせるものがある。それは本作そのもののホラーとしての完成度に結実してないかもしれぬが、何かをデジタイゼーションする過程で魔的なものを取り込む、魔はバグのことである、リアルにおいてバグのように見えるものが魔だ、というイメージはキた。実質の主人公は笹野高史さん! 笹野爆発。笹野版「怒霊界エニグマ」というか。
キザり仏語発音とかヒくけど大事な主題はあった。この映画のなかで、出てくる男がほとんどバカというか女性と並ぶ・関わるとひどい存在なのだがそれを全然否定できない。社長と名刺交換して、しゃ、しゃちょう! と恐れおののくとか、その社長とヒロインの交友に、テメエ人脈誇ってんじゃねえ! と圧をかけるとかこんな頭が病気な会社員男がおるかと思いきや多数実在する日本社会。本作はいわばそれに対する「香水バカ日誌」。世の腐臭に抗するために女性らには香水が必要だろう。
ドラマ「緊急取調室」だろうがドラマ「めんたいぴりり」だろうがマーベルコミック原作映画だろうが、そこに一本の映画として出てくるなら変にご存知ですよねという雑さを見せてほしくない。その傲慢さは与党と同じで面白くない。だが人物や作品世界の構築、背景の蓄積の良さもたしかにある。最大の取調べ相手をもってきてファイナルとしたのも良いし、首相が人殺しだったのも面白い。首相襲撃犯有理というのも。だが罪を問いきれず、強権による武器使用を是としたのはダメだった。