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実年齢よりもかなり上の役の戸田恵梨香と、実年齢よりもかなり下の役の永野芽郁。この二人が母と娘を演じていることの違和感がなんらかの伏線なのかと思いきや、最後までその違和感は解消されず。高畑淳子の大仰な演技と合わせて、テレビでも辛うじて成り立つかどうかの企画をスクリーンで見せられているような気持ちに。あと、こういう主題の作品こそ年5本も新作が公開される「売れっ子」ではなく、日本のメジャー映画で極端に少ない女性監督起用の機会にすべきなのでは?
登場人物全員が思っていることを全部口にして、しかもその台詞がことごとく紋切り型のフレーズばかり。大衆向けメロドラマとはいえ、ここまで稚拙なナラティブの作品は今どきテレビドラマでも滅多にお目にかかれない。高い使用料を払ったはずのジョン・レノンの曲を台無しにする他の選曲と使い方。モブだけでなく主要人物の服装まで詰めの甘い時代考証。以前から廣木隆一作品の欠点は作家性の欠如以前の固有の審美眼の欠如だと思ってきたが、本作にはそれが最も悪いかたちで出ている。
タイトルもそのまま、映写のフィルムチェンジを人生の転機に見立てた、もはや暗喩を取り繕うとさえしていない「映画についての映画」。産業としての映画の終焉を察知してか、世界中の巨匠名匠がこぞって「映画についての映画」を作っている現在、その試みはあまりにも無防備で素朴にも思えるが、本作はその無防備さと素朴さも味方につけて清々しい着地点へと誘う。限定されたロケーション、役者による演技のバラつきなど、商業映画として気になるところは多々あるが。
昨今なら「有害な男らしさ」という安易な言葉で回収されてしまいそうな詩人=芸術家である主人公の愚かさを、主人公をことさら自罰的に描くのではなく、その妻にもことさら寄り添うことなく、腰を据えてじっくりと慎重に浮き上がらせていく。「貧すれば鈍する」のは男も女も同じという意味では、現代的なテーマも内包していると言えるのか。個人的にはこの種の悲痛さを映画に求める嗜好はないのだが、東出昌大が替えの効かない優れた役者であることを再認識した。
母親からお姫様のように育てられ、母親っ子のまま結婚して娘を生んだ女と、母親っ子になりたいのに愛してもらえなかったその娘。「母性」というタイトルに惑わされそうになるが、内容はひところ流行った大仰な女性向き読み物シリーズ、ハーレクイン・ノヴェル的で、演出も女優陣の演技も意図的にハイテンション。そういう意味では面白くなくもないが、女には二種類ある。いつまでも誰かの娘である女と、いつまでも誰かの母である女、という手前味噌的台詞には苦笑い。
それにしても頻繁に変わる時間軸にはかなり戸惑う。そして前世の記憶を持って生まれた女の子の、その記憶に操られた奇妙な言動。そもそも前世のパートに当たる有村架純のキャラクターからして誰かの記憶を背負っているようにぎこちなく、彼女の恋にしても、生まれかわってまで結ばれたくなるような重量感はない。とは言え、いくつもの具体的な記憶の因縁は強引なりにミステリアスで、廣木演出も迷いがない。我が地元で、かつて何度も通った早稲田松竹の登場にはニンマリ。
ややこしい言い方になるが、後ろ向きなりに前向きな映画ではある。いまや滅多に見かけないフィルム映写機に魅せられた浪人生のささやかな気持ちの張り。といって浪人生の未来が明るいわけではないのだが、等身大の話として実感はある。が彼の姉がオープンしたという設定のミニシアターの活気のなさは、観ているだけで気が滅入るほどで、撮影は実在する青梅の木造映画館、せめてもう少し賑わいを見せてほしかった。これでは早晩、店仕舞いになっちゃいそうで、そっちの方が気になる。
詩人・三好達治が執着し渇望した慶子(萩原朔太郎の妹)のキャラクターが小気味いい。演じる入山法子のいかにも血の気が薄そうな華奢な容貌が役にピッタリなのだ。そんな慶子に振り回される男のエゴと無様さを描いたナマ臭系のメロドラマで、朔太郎をはじめ、当時の文壇のお歴々がチラチラ登場するのも興味深い。戦時下という時代背景も。ただ大人の男と女の関係は、文壇人であろうがなかろうが、所詮お好きにどうぞとしか言いようがない。「あちらにいる鬼」よりは素直に観たが。
登場人物ほぼ全員狂っているというヤバい種類の面白さに興奮。だがノレない点がふたつ。そのとき男たちは何をしてたか、どんな表情をしてたかを撮りこぼしていることと、娘が父を詰める、それ自体は名場面のなかで出る彼女の「あんたらヴェトナム戦争も日米安保もどうでもよくって個人的な不満の鬱憤ばらしだったんでしょ」という認識。まあその見方なら彼女も内面の反映以外の世界に出ないまま地獄を再生産するだろうから首尾結構は合っているかも。大地真央と高畑淳子が良い。
恋愛映画に寄せた「オードリー・ローズ」。転生はポジティブな奇跡か、愛を追う執念か。その発端にゾッとするような男による女の抑圧があり。田中圭が演じるキャラがすごい。あれで、前世の記憶? という抵抗感はぶっ飛ぶ。男側ばかり愛され設定はキモいが。そして有村架純さんは今こんな、学生下宿に来る人妻役とかになったのか。有村架純史上最高。あとディテール的に同時録音は考証ミスか嘘ながらあの8ミリ撮影は沁みた。女性を8ミリで撮ることの素晴らしさを思い出す。
ああ、これは個人的には、フィルム上映の映写技師経験者としては、ちょっと冷静ではいられない、思い入れてしまうところがある映画ですね。映画のフィルム上映ということが特殊なことになり消えていこうとする今、記録としての意味もあると思う。この主人公ぐらいの年齢で私も映写を習い覚えたし、その後機会があってすごい量の面白い映写をやった。でもそのせいであんまり人生論に重ねたり、象徴的には捉えなかった。この映画が不意に私に投げてきたのは大きな肯定でした。
※今回はお休みです