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趣味のワルい、そしてまったく笑えないダーク・コメディで、そういう意味では面白くなくもない。一夜にして身一つになってしまったヒロインが、一カ月後には妻を亡くした裕福な医者と結婚、さあ、幸せよドンと来い、と思いきや、8歳の義理の娘がとんでもない小悪魔で……。8歳のその小悪魔ぶりは、いくらフィクションでも気色がワルく、演じているCOCOが達者なだけに逆にハラハラしてくる。渡部監督は脚本家としても実績を積んでいるが、今回は子供をダシにして悪ノリか。
設定も人物も、そして映像もミステリアスな、オリジナル脚本だが、118分、描き足りないような、或いは描きすぎのような。いずれにしてもどこか据わりの悪い印象が残る。“空蝉”と言えば『源氏物語』のまだ10代の頃の光源氏がいたく執着した若い人妻の名前で、何かそれと関係がとも思ったが、ひょっとしたら定年間際の刑事(柄本明)にとって酒井法子が演じる女は、女の抜け殻だったか。深い森のロング映像と正体不明の人物が非現実的で、ラストの水中映像も後を引く異色作。
前回の「犬鳴村」もそうだったが、清水監督は差別や偏見で見捨てられた人々の恨みやつらみを恐怖化して描く傾向がある。それと軽薄で物見高い野次馬達。今回は負のイメージが付いて回る樹海村を舞台に、あれやこれやの情報と小道具を使って恐怖を演出しているが、主人公姉妹が恐怖に関わるきっかけが全く不明で、特に統合失調症だという妹のその要因は何が何やら。樹海の映像にいまいち迫力がないのも残念だが、怖がりたい人が見るには、タイトルだけで充分ってことなのかも。
タイトルからてっきり、災害時に地元の若者たちが、地域の人々のためにラジオ局を立ち上げる話、と思ったら、何のことはない、劇中の10人の“僕ら”は自分の居場所探しでWebラジオをやっていて……。しかも彼らの言動は中高生の部活レベル、2人ずつの共同生活はまるで修学旅行でハシャいでいるガキ並。それでも終盤は自分たちなりの役目に気付きはするが、甘いし軽いし。重し役のイッセー尾形の泣かせ芝居もムリヤリ感が。あ、ロケ地の石段の多い雨降山は魅力的だった。
幼少期にトラウマを抱えた女性が「王子様」との結婚に幸福を見出そうとする前半は、ありきたりな不幸の光景をなぞるだけで正直退屈。もちろんそこでの「絵に描いたような不幸(幸福)」がのちの裏返しへの伏線となっているわけだが、中盤以降、「悪い種子」風サイコ・サスペンスが展開されるに至って、その背後にあるべき主人公のドラマを深めていなかったことが災いし、ついぞジャンル映画的な脅かしの域を出ない。怖さを他人事で終わらせないためのもう一押しがほしかった。
撮影(中尾正人)と照明(赤津淳一)に息をのんだ。冒頭の暗い森とそれに続く夜間の街路風景、日本家屋の庭の木々が室内をうっすらと緑色に染める光の使い方、水中の深い蒼。画角や構図にも都度たくらみがあり、観る者を引き込む。終始疲れた(憑かれた)表情の酒井法子はじめ役者たちもそれぞれに魅せるが、直接的な描写のみならず、あらゆる場面に重いエロティシズムが宿っているのは紛れもなく亀井亨の作家性である。時期には恵まれなかったものの、ひとまず公開を喜びたい。
清水監督も述懐しているように、この非常事態下の影響か、前作「犬鳴村」とくらべると、「人のつながり」に対する作り手の切迫感が段違い。若者たちの微妙に噛み合わない関係性や統合失調症といった要素を真摯に突きつめていく中盤までは(人が気前よく死にすぎるのが些か気になるけれど)目を瞠る。が、視覚効果と物量勝負で押してくる終盤の展開で一気に冷めてしまった。YouTuberの表層的な扱いやこれみよがしな前作へのセルフオマージュもただ緊迫感を殺ぐ結果に。
ラジオ番組発の内輪的ファミリー感と伊勢原市のバックアップによる観光映画の能天気さが融合した企画で、それ以上でも以下でもない。旬の若手俳優目当ての観客にとっては随所に見どころがあるのかもしれないが、キャラクターも各々の葛藤もことごとくテンプレで、同じテンプレなら頑固な豆腐職人になりきってみせたイッセー尾形のほうがまだ面白い。「樹海村」でもよい仕事をしている福本淳のキャメラが、人物と空間の輪郭をくっきり切り取って映画の画面を成立させている。
魅力と安定感の土屋太鳳、メリハリの田中圭、決まりすぎくらいの撮影と美術、そして野心満々の渡部監督。COCOを筆頭に子役たちまで挑むようにスキがなく、くっきり写っている。これを娯楽として楽しむ人も、社会の病的な暗部への批評あるいはその毒に対抗する毒として受けとる人もいるだろうが、待ってくれと言いたい。ヒロインが救われるように入った「幸福」からの脱出を、その過去の体験からの思いが阻む。周到にそう作ってある。作ってあるだけという虚しさが全体にある。
酒井法子の危うさを目一杯使ったストーリーと撮り方。冒頭しばらくは顔が見えない。顔が見えてからも人間として迫ってくるものがない。酒井法子はそうなのであり、役の狙いでもあればそれまでだが、何を救おうとする謎解きなのか、はっきりしないままだ。亀井監督と中尾正人のカメラによる創意の画も、アート感はあるけど、寄るべきところで寄らないし、グレーディングもワンパターン。男性陣、中途半端に動かされている感じで同情するが、善悪どちらでも行きつく場所が見えない。
樹海の出てくる作品、ずいぶん見た気がする。これは決定版にするくらいの気合いで臨んだものだろうか。新旧の、恐怖の土壌に貪欲に向かい、既視感などに臆さないのが、清水ホラー。強引に話を運び、呪いの元となる過去の惨劇をできるかぎりおぞましいものにする。こうなったら、人が人に対してやってきた非人道的なこと全体への大いなる批判を魔の力の根拠にしたいところ。もう一息か。ここではコトリバコだが、都市伝説と若者たちの扱い方、やはりなにかなぞる感じになるのが弱い。
ネットのラジオ番組から生まれた作品。番組のパーソナリティの十人の若い男性が登場する。十人、これがかなりの無理。現実に十人の生活をネットラジオで維持できるかは問わないとしても、十人のキャラクターを描きわけるのは簡単じゃない。わざとらしい各自の自己紹介から、終盤に用意された「自分を取り戻す」「人のつながりの大切さ」まで、川野監督、月並みをなんとかしたいのだろうが、工夫は空振り気味。きれい目に撮っただけの画。歌もイッセー尾形もあまり活かされていない。